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広島高等裁判所岡山支部 昭和24年(を)443号 判決 1949年12月07日

被告人

鳥越朋市

主文

原判決を破棄する。

本件を岡山地方裁判所に差戻す。

理由

職権を以て審案するに、記録を精査すると、原審は、本件公訴事実を認めるに足る犯罪の証明がないとして、被告人は無罪の旨判決したが、原審における重要な証人、殊に証人原田朝男、笹井米太郞、山足三郞、花川弘の如きは、宣誓の趣旨に反するか、然らざるもまじめを欠くやうな証言をしていると思われる形跡が諸処に散見せられ、檢察官も、これらの証言に対しては、刑事訴訟法第三二一條第一項第二号により、原審公判期日における証言が、檢察官の面前でした前の供述と相反するか、若しくは実質的に異り、しかも原審公判期日における証言よりも檢察官の面前における前の供述を信用すべき特別の情況が存するものとして、如上の証人らに対する檢察官及び檢察官事務取扱檢察事務官の供述調書を証拠として提出したところに鑑みれば、証拠の價値判断は素より裁判所の自由なる心証によるものではあるけれども原審は、今少しく審理を盡した上公訴事実に対する証拠の有無を判断すべきものと思料する。しかるに、原審は、事こゝに出でずして本件公訴事実を認めるに足る証明がないとしたのであるから、結局原判決には審理不盡による理由不備があるものと認めざるを得ない。

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